ARTIQ JOURNAL / No. 15 / CARTIER / OFF THE BEATEN PATH
人と被らない一本を。
廃盤カルティエを追う。
タンクでも、今のサントスでもない。その選択にこそ、自分らしさが宿る。金無垢のクレ ドゥ カルティエを入口に、現行の顔ぶれから少し離れた三つの個性を訪ねる。
まずは、このクレから。丸い時計に、鍵という発明。
遠くから見れば、柔らかな丸い時計。近づけば、その輪郭は単なる円ではない。文字盤を包むケースの左右がふくらみ、側面に収まったリューズが小さな建築のように立ち上がる。クレ ドゥ カルティエの「クレ」は、フランス語で鍵。時刻を合わせるための部品を、時計の顔を決める意匠にしてしまった。
2015年に登場したクレは、カルティエが新たなコレクションとして打ち出した時計だ。[1] タンクやサントスの復刻ではなく、曲線と操作する感触から別の個性をつくろうとした。その試みを、今あらためて腕に載せる面白さがある。
ARTIQの一本は、40mmの18Kローズゴールド製。ケースだけでなくブレスレットまで金無垢で、シルバー系の文字盤とブルーの針が、赤みを帯びた金の中に涼しい表情を置く。淡いニットや白いシャツの袖口から少し覗かせたい。正面の顔以上に、斜めから見たときの曲線に惹かれる一本だ。
廃盤という言葉を、値札の理由だけにしない。
廃盤と聞くと、希少性や将来の価格を先に考えてしまう。けれど、生産が終わったことと、生産数が少なかったことは同じではない。ここで追いたいのは、数の少なさを証明できない「レア」ではなく、今の店頭では選びにくくなったデザインだ。
クレやカリブルは、生産終了モデルを扱う専門店や時計メディアでも取り上げられている。[2] コレクションの変遷を、売れなかったから消えたという一言で片づけるのはもったいない。現行のラインアップから外れても、その輪郭を好きだと思う気持ちまで古くなるわけではない。
カルティエらしいローマ数字やブルーの針は知っている。でも、このケースはあまり見たことがない。その小さな違和感が、会話のきっかけになる。人と被らない時計を選ぶとは、誰も知らないブランドを選ぶことだけではない。よく知られたメゾンの、少し違う一章を選ぶことでもある。
カリブル ドゥ カルティエ。端正な文字盤に、スポーツの骨格。
次に見るのは、カリブル ドゥ カルティエ ダイバー W7100056。クレが曲線と金の温度で見せるなら、こちらは黒い文字盤、ベゼル、ラバーストラップの組み合わせで、輪郭を強く見せる。スーツに似合う時計というカルティエのイメージから、もう一歩外へ出たような一本だ。
それでも、ローマ数字と大きく見せた12時の表情には、メゾンの文法が残る。スポーツウォッチの顔を借りても、匿名的な道具にはならない。ダイバーという用途の造形と、カルティエの装飾感覚が同じ文字盤に同居している。
白いTシャツや黒いニットに合わせれば、ジュエラーの時計を日常のスポーツウェアへ引き寄せられる。ARTIQでは、このW7100056の実在庫を紹介している。通常のカリブルや別素材の個体に置き換えず、写真の一本を選んでほしい。
サントス100。四角い名作の、厚みのある時代。
サントスの名は今も続いている。だから、サントスそのものを廃盤と呼ぶのは正しくない。ここで見たいのは、その長い歴史の中にある「100」という世代だ。サントス誕生100周年の2004年に登場したサントス100は、名作をより力強いプロポーションで表現した。[3]
ARTIQのサントス100 LM W20072X7は、白いローマ数字の文字盤に、ゴールドカラーのベゼルとレザーストラップを組み合わせる。角を丸めた四角いケース、ベゼルのビス、太さのある輪郭。細身のドレスウォッチとは違う存在感を、革の柔らかさで受け止める。
現行のサントスと優劣を決めるための一本ではない。少し厚みのあるニットやジャケットに合わせたとき、この世代の量感がちょうどよく感じられることがある。年代を選ぶことは、服に合うバランスを選ぶことでもある。
名前よりも、一本の完成度を見る。
同じモデル名でも、素材、文字盤、サイズ、ブレスレットか革かによって、印象は大きく変わる。クレなら、ローズゴールドのブレスレットまで続く柔らかさ。カリブルなら、黒とラバーの一体感。サントス100なら、ケースの量感と革の釣り合い。好きな理由を、その仕様まで言葉にできると選びやすい。
そのうえで実物の写真を見る。ケースの輪郭、風防、リューズ、留め具、ブレスレットの長さ。磨きや使用感も含めて、この一本とどう付き合いたいかを考える。廃盤モデルの修理や部品供給は型番・状態によって異なるため、将来の整備についても個別に確認しておきたい。
いま誰もが欲しがるものを追う楽しさもある。でも、少し前のカルティエの中に、いまの自分にちょうどいい一本が眠っているかもしれない。知っているはずのブランドを、もう一度、自分の目で選び直す。その入口に、このクレを。
FIRST, AT ARTIQ
ARTIQの現在庫より
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