ARTIQ JOURNAL / No. 07 / GRAND SEIKO / THE FIRST
世界を目指した、その最初の一本。
Grand Seikoの歴史。
Grand Seiko 1stは、単に古いグランドセイコーではない。日本で最高の腕時計をつくるという決意が、初めて姿を得た一本だ。その出発点から、今日まで続く美意識と精度への挑戦を辿る。
- 1960初代グランドセイコー
- 196744GSとデザインの確立
- 19939Fクオーツ
- 19989Sメカニカル
- 20049Rスプリングドライブ
1960年。「最初」であることの重み。
1960年12月18日、初代グランドセイコーが登場した。手巻きのキャリバー3180を収めた、端正な三針時計。スイスのクロノメーター優秀規格に相当する社内検定を通し、歩度証明書とともに販売された。スイスで認定を受けた、という意味ではない。自らの時計の精度に、自ら厳格な基準を課した出発点だ。[1][2]
「ファースト」という呼び名には、完成されたブランドの原点を手元に置く楽しみがある。後世の評価を知ってからつくられた時計ではない。その先に何が続くかまだ決まっていない時代の、意志のある造形。その距離感こそ、この時計を見る面白さだ。
小さな丸いケースに、揺るがない存在感。
オリジナルのケース径は35mm。2020年の復刻では38mmへと拡大されたが、初代の魅力を考えるなら、まずこの小さな寸法に目を向けたい。[2]
細いシャツの袖口に収まる時計が、必ずしも控えめに見えるとは限らない。文字盤の余白、針とインデックスのバランス、ケースから伸びるラグ。それぞれが適切な距離を保つことで、装飾を増やさずに品格をつくる。現代の大きな時計に慣れた目には、その凝縮された均衡がむしろ新鮮に映る。
44GSへ。丸みから、光と面の設計へ。
1967年の44GSは、後に続くグランドセイコーのデザイン理念を形にしたモデルだった。初代の丸いドレスウォッチの印象から、面と稜線が光を受け止める表情へ。精度だけでなく、見ただけでそれとわかる輪郭を獲得していく。[1]
だから初代と44GSを選ぶことは、上位・下位を選ぶことではない。柔らかな装いに馴染む丸みを選ぶのか、シャープな面の陰影を選ぶのか。同じ名前の中に異なる美意識があるから、ヴィンテージのGSは年式だけでは選びきれない。
機械式だけでは語れない、精度への執念。
1988年にはクオーツの95GSが登場。1993年の9Fクオーツ、1998年の9Sメカニカル、2004年の9Rスプリングドライブへと、時間を正確に示すための道筋は一つに留まらなかった。[3][4]
古い機械式だけを正統と考えると、このブランドの面白さを取り逃がす。方法を守ることよりも、時計としての到達点を高めること。その考え方で見れば、初代の手巻きと現代のクオーツも、対立するものではなく、同じ問いに対する異なる答えとして並べられる。
いま、ファーストを纏う。
初代を現代で選ぶなら、年表の重要性と個体の状態は分けて見たい。文字盤の印字や表面、針、ケースの輪郭、裏蓋、整備履歴。モデルの名声が、その一本の状態まで保証してくれるわけではない。製造時の精度基準や防水仕様も、現在の性能とは別の話だ。
一方で、歴史的なモデルだからといって、特別な日までしまっておく必要もない。ニットの袖、洗いざらしのシャツ、静かな色のジャケット。時代の違うものを同じ装いに置いたとき、古い時計の輪郭ははっきりする。ARTIQに入荷した一本は、アイボリー系の文字盤に金色のバーインデックス、黒い型押しベルトを組み合わせる。文字盤の細かな経年変化と裏蓋のライオンも、実物写真で見ることができる。
FIRST, AT ARTIQ
ARTIQの現在庫より
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