ARTIQ JOURNAL / No. 12 / IWC / QUIET DETAILS
静かなIWC。
ヴィンテージのCal.852と、ポートフィノ。針、余白、ラグを眺めると、控えめな時計の中に違いが見えてくる。
何もないように見える文字盤ほど、見ていたくなる。
細い目盛りと針だけの時計は、写真を小さくすると似て見える。ところが拡大して見ると、針の先、目盛りの長さ、ロゴの位置が驚くほど印象を変える。飾りが少ないからこそ、一つひとつの要素を隠す場所がない。
今回はヴィンテージのCal.852とポートフィノIW356517を取り上げる。ケースの素材感も寸法も違う二本であり、同条件の世代比較ではない。IWCの中にある静かな表現を、それぞれ一枚の肖像として眺めてみたい。
Cal.852。中心から外へ、針がつくる緊張感。
入荷したCal.852は、明るい文字盤に金色の針と目盛りを置く。針には幅があり、先へ向かう形が視線を外周へ導く。商品情報の約34mmという横幅の中でも、針が担う役割は決して小さくない。
文字盤には経年変化があり、AUTOMATICの文字も薄れている。新品のように均一な面ではないから、針の光と文字盤の濃淡を別々に見る楽しみがある。一方、それを機械の健全さと混同してはいけない。Cal.852という名称や過去の整備に関する説明だけでは、現在の精度や整備状態までは確定しない。
ポートフィノ。広い余白に、細い線を置く。
IW356517の文字盤は、針や目盛りを細い線として見せる。3時位置の日付窓と上下のローマ数字が、広い面の中で小さな節目になる。約40mmとして登録されたケースは、ヴィンテージの一本とは違う余白の使い方を見せている。
この個体のバーガンディの革は、銀色のケースと明るい文字盤へ色を加える部分だ。文字盤だけで静かさをつくるのではなく、革を含めた全体の配分が大切になる。裏蓋には個人の刻印がある。表から見えない情報も、ヴィンテージや中古の時計では、その一本を選ぶ判断材料になる。
静かな時計を、日常のどこへ置くか。
時計を選ぶとき、最初はブランド名や機構に目が行く。それらを知ったあとに、もう一度写真へ戻ってみる。自分が惹かれたのは針の太さか、目盛りの間隔か、それとも革との色の組み合わせか。そこまで言葉にできると、時計との付き合いは少し個人的になる。
ヴィンテージの温かい色を、淡いシャツの袖口に。ポートフィノの広い文字盤を、色数を抑えた服に。これは着こなしの規則ではなく、二本を眺めて浮かぶ提案だ。静かな時計のよさは、強い物語を押しつけず、持ち主の一日に余白を残してくれるところにある。
FIRST, AT ARTIQ
ARTIQの現在庫より
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